中川李枝子さんから『ぐりとぐらとすみれちゃん』の原稿を見せていただいたとき、「ぐりとぐら」のシリーズで初めて、読者の子どもたちと等身大の人間の女の子が登場してきたのが、印象的でした。そのことを申し上げると、「実はね、すみれちゃんにはモデルがいるのよ」と、すみれちゃんとの出会いをお話ししてくださいました。 その1年数ヵ月前、盛岡で講演の後、李枝子さんは、1通の手紙を手渡されました。手渡したのは、幼稚園の先生をしていらっしゃるすみれちゃんのお父さんで、手紙はすみれちゃんのお母さんからでした。手紙には、すみれちゃんが4ヵ月前、脳腫瘍で4歳の命を閉じたこと、生前、元気なときも、病院のベッドでも、「ぐりとぐら」の絵本を本当に楽しんだこと、何も食べられなくなってからも、『ぐりとぐらのえんそく』のお弁当の場面を開いて、「今日はこれにする」と、食べる真似をしていたことなどが綴られていました。そして、最後に