認知症を患っていた92歳の母に小刀を突き刺した。静かになった自宅で、長男(71)は遺体と向き合いながら一夜を明かした。「ごめんな、ごめんな」。大阪府枚方市の自宅で7月、母親を殺害したとして、殺人罪に問われた長男は、大阪地裁の裁判員裁判で「老老介護」の実態を吐露した。介護費用は家計に重くのしかかり、身体にむちを打ってアルバイトをしても、「貧困」から抜け出せなかった。たった1人で母を支えた7年の歳月。その暮らしに自ら終止符を打ったが、逮捕後、留置場で血を吐いて昏倒(こんとう)した。心身は深くむしばまれていた。 精神の均衡奪った激しい腹痛 「泥棒が入った! 110番して!」 7月7日午前4時。2階で寝ていた長男は、1階にいる母の叫び声で目を覚ました。 認知症の母は被害妄想が激しく、ときに鬼のような形相で騒ぎ立てるのだ。 「何も盗まれてないよ」 そう言ってなだめると、いったんは落ち着いてくれた。そ