この本を読んで、はじめて「ナイルレストラン」に行ったときのことを思い出した。 まだ学生時代、ランチタイムを外した時間でひとりだったはずだ。「メニューください」というと、日本語がペラペラなインド人が、 「はじめて? なら、うちにしかないムルギランチにしなさい。鶏の腿肉が骨ごと入っていておいしいよ」 と半ば強引に決められてしまった。料理が来ると、手早く骨を外してくれ、 「カレーと肉とキャベツとジャガイモとごはん、ぜーんぶ混ぜるね。それが一番おいしい」 と食べ方まで指導される。家ではごはんとカレーを少しずつ混ぜ合わせながら食べることがきれいに食べられ、正しいと躾けられていたから、「本当かなあ」と思ったのだが、まずカレーだけで一口、追って混ぜ込んだところを一口食べると、全然違う味に変化したことに驚いた。 手で混ぜて食べるインドの食文化の豊かさを実感した瞬間だったーーというのは後知恵だが、この体験が