こと「組織の中で働く」という視点で考えると、「人事管理に最も困難を伴うのは聴覚障害のある人たちではないだろうか」――障害のある当事者を含めて、障害者雇用に関わっている企業人や専門家に取材すると、こうした意見をよく耳にする。 障害者の実情に詳しくない人には、これは意外な見解に感じられるかもしれない。耳は不自由でも、目は見えるし、自由に歩くこともできるので、手話や筆談でカバーし合えば、仕事に大きな支障は生まれないように思えるからだ。 確かに、一般に「人が得る情報の9割は目から入っている」などと言われる。IT(情報技術)が進化した昨今では、重要な社内情報はイントラネットで共有され、業務上のやり取りもメールで自由にできるようになっているから、目が見える聴覚障害者が特別に不利となる場面は少ないはず。緊急の連絡も、携帯メールで対応できる。車いす使用者のように電車通勤ができないといった移動に伴う障壁(バ