院生時代に愛読していた『MASTERキートン』に好きな話がある。研究者と保険屋の間で「優秀な保険の調査員」であることに悩んでいたキートンが大学図書館に行ったときのもので、図書館でバイトしている院生がカウンターに現れた人物をキートンと知るや、その手を握りしめ「あんな素晴らしい論文初めて読みました!僕はあれを読んで研究者になろうと決心したんです!」と語り、言われたキートンがびっくりする、というシーンである。「あんな素晴らしい論文初めて読みました」と、いつか一度は言われてみたいものだと思いながら、その願いを果せず今に至っている。 論文の書き方を考えるときは、私の場合、いつも上手く書けていない、書いたけれど不満が残った、もっと上手になりたい、そんな風に思うときだと相場が決まっている。上手く書く方法や文章術についてネットで探せばいくらでも出てくる。文章読本の読本まであるご時世である。 けれど、そんな