登山者が峻険なる山々に挑戦するのは自由だが、命を失う危険と隣り合わせであることを、各々が自覚する必要がある。 今年の冬山シーズンでは、過去最悪ペースで山岳遭難事故が発生している。全国から登山者が集う北アルプス(岐阜、長野)では昨年12月から既に20件以上の山岳遭難が報告され、死者は10人以上を数えた。 救助隊が事故に巻き込まれる二次遭難もたびたび起こっている。己の登山技術への過信から最悪の事故に至ってしまった時、それは自分だけの問題ではなくなるのだ。ノンフィクションライターの柳川悠二氏がリポートする。 * * * 長野は年間70万人もの登山者が訪れ、遭難事故件数が全国ワースト1位の県である。昨年は過去最高の254件(死者・行方不明者は50名)の山岳遭難が起こり、全遭難者は279人にのぼった。そのうち78.5%となる219人が40代以上の登山者(死者・行方不明者は46名)だった。 ちょう