暑い日盛りに、お話を伺いに横浜市金沢区の山田工業所へお邪魔した。打ち出し機の音が響く工場2階の事務所で、2代目社長の山田豊明さんが笑顔で迎えてくれた。早速、会社の生い立ちをうかがう。 「会社創立は昭和32年です。創業はその数年前だと思います。それまで蕎麦屋の小僧だった父が仲間3人で始めました。 まだまだ鉄そのものが不足していた時代で、鍋も足りなかったんですね。みんなが生きていくために鉄くずを拾ったりしていましたが、私の父は、ドラム缶の底の鉄板をハンマーで叩いて、鍋を作ることを考えたんです。鉄はなかったですが、ドラム缶だけは豊富にありました。 もっとも、父に打ち出しの経験などまったくなく、本当の素人仕事だったようです。今ならとんでもないことでしょうが、当時はそんな風潮があったのです」 なんと父・久男さんは、ズブの素人からハンマー1本で、見よう見まねでさえなく、手探りで中華鍋を作り始めたのだっ