この連載を通して「建築物の基礎の基礎」を聞かせていただいて思うのは、専門家の方がまさしく文字通り「地面の下のことは、掘ってみるまで分からない」と考えていることだ。地盤を直接目で見ることはできない以上、穴を掘る機械のトルク(電流値)の変動や標準貫入試験などで、「近似値」を集めて推定するしかない。 こうした近似値、二次情報には、設計者やオペレーターが変われば、見方や数値も変わりかねないほどあいまいな部分がある。だから慎重に、推定と検証を重ねて、安全を確保できるように設計・施工する。そして、その際に危険なのは、「推定」が「事実」として一人歩きをすることだ。 これは、施工現場だけの話ではない。 今回の事件報道でも、どこまでが「事実」で、どこからが「推定」なのかが、いつの間にか分からなくなっている気がする。その状態で犯人捜しや原因を決めつけるのは、基礎がいいかげんな建物に住むようなものだ。いずれ、沈