□『シモーヌ・ヴェーユ回想録 20世紀フランス、欧州と運命をともにした女性政治家の半生』 ■地獄を生き抜いた仏政治家 「人間は少なくとも他者への憎悪と戦うために団結する必要がある」-ナチス・ドイツの強制収容所の中でも最大かつ最悪といわれ、約100万のユダヤ人が犠牲になったアウシュビッツ強制収容所の解放60周年式典で、奇跡の生還者シモーヌ・ヴェーユ氏は反ユダヤ主義や反寛容と戦い続けるよう強く呼びかけた。 2005年1月27日のこの日、シラク大統領(当時)やヴェーユ氏ら仏代表団の同行記者として吹雪の中、屋外で行われた式典を取材したが、この時の光景とヴェーユ氏の毅然とした姿は忘れられない。 ヴェーユ氏は1927年7月13日、仏南部ニース生まれ。父親は建築家。美人の母に姉2人、兄1人の末っ子として幸福な子供時代を送った。19世紀末にフランスに帰化した一家は非宗教を国是とする仏共和国の仏国民だ。それ