タグ

ブックマーク / yamaguchijiro.com (7)

  • 政党政治は踏ん張れるか | YamaguchiJiro.com

    平沼・与謝野新党の結成で、自民党の解体は一層加速された観がある。他方、五月末とされる普天間基地移設問題の決着期限が迫るにつれ、鳩山政権の混迷も深まっている。昨年の総選挙では二大政党時代の到来とも言われたが、むしろ二大政党を含めた政党政治の融解現象が進んでいるのかもしれない。 自民党はまさにアイデンティティ・クライシスにのたうち回っている。自民党は冷戦構造の中で、日を西側につなぎ止めるために権力を保持してきた。辻井喬氏が最近上梓した大平正芳の伝記小説『茜色の空』(文藝春秋)を読めば、今から三〇年ほど前には冷戦構造の動揺や資主義の爛熟の中で保守政治を再定義しようとした政治家もいたことが分かる。しかし、八〇年代以降の革新勢力の衰退の中で、保守政治家からはそのような問題意識が消えていった。この二〇年ほどは、自民党は長年権力の座にあったが故の、ひときわ鋭い政治的動物としての能によって、どうにか

  • 小沢一郎の闘い方 | YamaguchiJiro.com

    石川知裕代議士が国会開幕直前に逮捕された事件には、私も仰天した。政治資金収支報告書の不備くらいで国会議員を逮捕するなど、非常識な話である。検察のねらいは、ゼネコンからの裏金の流れを裏付ける自白を取ることなのだろう。これまでマスメディアが伝えてきた疑惑が物かどうか、私にはまだ判断ができない。 ただ、小沢一郎幹事長の対応には不満がある。幹事長を一時休職し、裁判闘争に専念するとのことだが、そこで言う検察との闘いとは何なのだろう。ことは法律問題ではなく、政治闘争である。法律闘争ならば検察が立証責任を果たさない限り自分は潔白だと主張すればよいのだが、政治闘争においてそんな呑気なこと言っていては負けてしまう。 この政治闘争は、国民が小沢と検察のどちらを信用するかという闘いである。この闘いに勝つためには国民の信頼を勝ち取ることが不可欠である。そのためには、小沢は土地購入に関する資金の流れにやましい点は

  • 08年5月:ポピュリズムと民主政治についての考察 | YamaguchiJiro.com

    1 近代民主政治の業としてのポピュリズム 大衆民主政治の病理を批判するときのポピュリズムという言葉は、最近日語にも定着している。中身はないが大衆受けする政治家に対してポピュリストという悪罵を投げつけたくなるという気分が、この言葉に関する最大公約数であろう。したがって、イデオロギーの尺度に関しては右でも左でもポピュリズムの政治は成り立つ。小泉時代の日のようにテロの脅威や官僚嫌いの気分を煽れば、警察・軍事を中心とする国家権力の強化を支持しつつ、後見主義的平等を忌避する右派的ポピュリズムが成立するし、チャベス政権のベネズエラのようにアメリカ嫌いや反グローバリズムの気分を煽れば、平等を求め経済的強者を排斥する左派的ポピュリズムが成立する。 しかし、ポピュリズムとは、論者が自らを高みに置いて批判していればすむという問題ではない。現代の民主政治においては、各人の知的能力や政治的関心の度合いには無関

  • 07年4月:無党派とは何か | YamaguchiJiro.com

    注目されていた統一地方選挙前半戦は、結局現職首長の圧倒的強さが確認される結果に終わった。今回の選挙には、無党派層と呼ばれる人々の政治的な思考様式が現れたように思える。 東京都知事選挙で三選を果たした石原慎太郎氏と、広島市長選挙で同じく三選を果たした秋葉忠利氏とは、政治信条や政治手法においておよそ対極に位置する。石原氏は好戦的な発言を繰り返し、女性や外国人に対する蔑視発言に現れているように、人権感覚など持ち合わせていない。秋葉氏は、平和と人権を政治の基に据えており、核兵器廃絶運動のシンボルである。両者が、それなりに有力な新人の挑戦を易々と退け、無党派層の支持を獲得して楽勝したことは何を意味するのであろうか。 まず明らかなことは、無党派層は平和主義あるいはナショナリズムといった特定の主義について、中身を理解して共鳴しているわけではないということである。情報化が進んだ今日、東京の無党派層はタカ

  • 07年2月:安倍政治は何を目指すのか | YamaguchiJiro.com

    大学は目下、期末試験の季節である。私は放送大学の客員教授も務めており、「現代日政治」という科目を担当してきた。今学期の試験には、「小泉政治の五年間で自民党はどう変わったかを論じよ」という問題を出した。放送大学の学生の大半は、知的関心を持つ一般市民であり、この試験答案では、その人々に政治の現状認識を言語化してもらう機会となり、ある種の世論調査を行ったような興味深い結果が得られた。人々は小泉政治のどこを評価し、どこに疑問を感じているかが分る。また、その裏返しとして、安倍政権の不人気の理由も見えてくる。 小泉政治に対する肯定と否定の比率はおよそ六対四で、小泉政権が高い支持を持続したことはこの点にも現れている。小泉政治を高く評価する最大の理由としては、政治に対する関心を高めてくれたことをあげる声が大きかった。そして、派閥政治の弊害や官僚支配を打破したことを小泉政治の成果とする意見が目立っていた

  • 07年2月:政権政策の基本方針について | YamaguchiJiro.com

    安倍政権では、政治資金に関する疑惑や閣僚の失言が相次ぎ、支持率も急落している。しかし、各種世論調査を見ると、民主党に対する期待もきわめて低い。1月23日に掲載された『朝日新聞』の世論調査では、69%の人が「民主党は野党第1党の役割を果たしていない」と答え、民主支持層ではその比率は76%に達している。同じ調査では、安倍政権の推進する成長戦略と、民主党が主張する格差是正について、前者を支持する人が30%、後者を支持する人が45%となっている。民主党の政策争点の設定は奏功しているが、肝心の党そのものに対する信頼度が今ひとつということであろう。 政党の信頼性を高めるための奇策は存在しない。よい候補者を立てて選挙を全力で戦うことと、政策をまじめに訴えることだけが国民の信頼を勝ち取る王道である。そうした観点からこのたび発表された「政権政策の基方針」を読むと、いろいろと注文したいことが浮かんでくる。

  • 07年1月:財界よ、驕るなかれ | YamaguchiJiro.com

    今ほど大企業の政治的影響力が高まっている時はないだろう。昨年末の税制改正の答申では個人に対する定率減税の廃止とは対照的に、法人に対しては減税が打ち出された。通常国会にはホワイトカラー・エグゼンプション制度が提出されることになった。当初はこの制度によって残業手当をもらえなくなるホワイトカラーは少数との試算もある。しかし、派遣労働に関する規制緩和の歴史が示すとおり、この種の規制緩和はどんどん拡大するに違いない。いざなぎ景気以来の長期拡大の成果も、労働者や家計には十分分配されていない。そのことに対する評価は様々であろうが、この現実自体を否定する人はいないであろう。 そんな折、日経団連が御手洗ビジョンを発表した。これは、愛国心の強調や憲法改正など重大な論点を含む政治に対する積極的な提言である。正月の新聞でこの提言を読んだとき、私は経済界の役割について錯覚していたことを思い知らされた。 日のよう

  • 1