平沼・与謝野新党の結成で、自民党の解体は一層加速された観がある。他方、五月末とされる普天間基地移設問題の決着期限が迫るにつれ、鳩山政権の混迷も深まっている。昨年の総選挙では二大政党時代の到来とも言われたが、むしろ二大政党を含めた政党政治の融解現象が進んでいるのかもしれない。 自民党はまさにアイデンティティ・クライシスにのたうち回っている。自民党は冷戦構造の中で、日本を西側につなぎ止めるために権力を保持してきた。辻井喬氏が最近上梓した大平正芳の伝記小説『茜色の空』(文藝春秋)を読めば、今から三〇年ほど前には冷戦構造の動揺や資本主義の爛熟の中で保守政治を再定義しようとした政治家もいたことが分かる。しかし、八〇年代以降の革新勢力の衰退の中で、保守政治家からはそのような問題意識が消えていった。この二〇年ほどは、自民党は長年権力の座にあったが故の、ひときわ鋭い政治的動物としての本能によって、どうにか