雨続きの東京に、ぽっかりと空いた奇跡のような晴れの日。降り注ぐ陽光は、凛と立つしなやかな姿を際立たせ、道路の上に伸びやかな影を写し出した。 「屋外で動きながらの撮影、初めてなので新鮮です」。柔和な笑みを浮かべながら、街を軽やかに歩き回る。その姿は、雑多な渋谷の空気をも変えていった。 フィギュアスケーターとしての町田 樹は、芸術性の高い演技と振り付けで、見る者の心を鷲掴みにし、その評価を欲しいままにしてきた。そして折々に繰り出される知性豊かな言葉から、“氷上の哲学者”の異名をとった。 昨年10月に、25年の長きにわたる現役生活に別れを告げた。それからおよそ半年が経ち、研究者として新たな人生を歩き出している。フィギュアの解説や、映画『氷上の王、ジョン・カリー』の字幕監修と学術協力を務めるなど、新たなジャンルの仕事にも注目が集まっている。 町田 樹は、いま何を考え、どこを見据え、どのようなフィー