カリスマ政治家、薄熙来氏が重慶市で行った改革は「重慶モデル」ともてはやされてきた。だが政策の1つ、暴力団撲滅運動「打黒」で無実の者が拷問を受けていたことが判明。腹心の離反に加えて、打黒の実態が明るみになりつつあり、薄氏の足元は揺れている。(本誌注:薄氏は3月15日に解任された、と報じられた) メタリックブルーの靴にピンクのポロシャツ、後退した前頭部を隠すように野球帽を目深にかぶった李俊氏は、逃亡者というよりどこにでもいる中年の中国人旅行者のようだ。 だが、彼は重慶市の元不動産開発王で、同市で近年行われた組織犯罪の一斉検挙運動「打黒(ダーヘイ)」により逮捕、拷問され、資産を押収された人物である。 ただ、「打黒」を主導してきた薄熙来(ボーシーライ)重慶市共産党委員会書記の将来に、このほど予想外の事態が発生し、陰りが見えてきたことから、1年以上逃亡生活を続けてきた李氏は自らの体験を公表することに