私たちが世界のことを知ることができるのは、各種メディアのグローバル化とともに、翻訳という媒介手段に負うところが大きい。翻訳は、華やかなイメージとは裏腹に、大変苦労の多い作業であるように思われる。二つの言語の間で、翻訳者たちは何を考え、何に悩むのだろうか。 筆者は、ある報告書の日本語版とその英語訳を突き合わせて検討したことがある。両言語ともに質の高い報告書であるとの評価を得ているものであった。その結果分かったのは、オリジナルの日本語版と英語版とは、段落の構成順序がまったく違っていたということであった。