5年前,東北地方を襲った巨大地震による大津波で東京電力福島第1原子力発電所の6基の原子炉のうち1号機から3号機まで3つの炉でメルトダウン(炉心溶融)が起きたとみられている。廃炉を進める上で,溶け落ちた核燃料の取り出しが最大の課題だが,その所在が不明だ。そこで空から降り注いでいるミュー粒子という素粒子をX線のように使って,事故を起こした炉の内部を写し出す試みが進んでいる。これまでの調査で1号機の炉心部は空で,核燃料が完全に溶け落ちたことがわかった。2号機も大部分の核燃料が溶け落ちたことが判明した。今後は新開発の装置を使って,溶融した核燃料が存在するとみられる原子炉底部を探る計画だ。 著者吉川和輝 日本経済新聞社編集委員。科学技術分野を幅広く取材している。 サイト内の関連記事を読む原発/東日本大震災/物理学 キーワードをGoogleで検索するミュォグラフィ/福島第1原子力発電所/シンチレーター