レファレンス 2008. 2 75 短 報 はじめに 内閣法制局は、政治部門における憲法解釈を 事実上委ねられている、あるいは、最高裁判所 が憲法判断に消極的であるため、事実上の憲法 解釈権を委ねられ、その解釈が有権解釈として 扱われていると指摘されることがある(1) 。しか し、国会や内閣、最高裁判所及び下級裁判所と 異なって憲法に規定された機関ではなく、内閣 法制局設置法(2) に基づいて設置された組織に過 ぎない内閣法制局が、憲法の有権解釈を事実上 委ねられているとはどういうことなのだろう か。本稿では、このような論点の検討に資する ため、内閣法制局の行う憲法解釈を概観する。 1 憲法の有権解釈 「有権解釈」とは一般に、国家機関、すなわ ち立法府である国会、司法府である裁判所、行 政府である内閣が、法の適用に際して行う解釈 を指し、 「公定解釈」とも言われる(3) 。これら の国家機