吉田さんが調査のために住み込んだザンビア東部、チェワの仮面は、主に葬儀に関わる局面で登場する。といっても、亡くなった人を埋葬する際にはキリスト教の方法が浸透していて、今では仮面の出番はない。農閑期である乾季に、死者の魂を送り出す喪明け儀礼「ボナ」の際に、仮面が大活躍するのだという。ボナの儀礼は大がかりで、開催だけでも1週間、準備期間も含めたら優に3週間はかかるものだという。 仮面結社に属さない「女性と子ども」(そして、当初の吉田さん)にしてみると、それはこんなふうに映る。 まず、ある夜にかがり火が焚かれ、広場で何組かの仮面をつけたニャウが、女たちの合唱にあわせて踊る。この際、ニャウはあくまでニャウであり、「誰かが仮面を被っている」のではない、と認識される。村のニャウの指導者が「明日からは、女は村でトウモロコシをつき、男は森でダンブヴェを開く」と宣言する。これが儀礼の開始の宣言となる。 ダン