プロローグ「終わりの始まり」 「ハアハアハアハア」 真っ暗な山道を、息を切らしながら自転車を漕ぐ男がいた。 いちばん近い街は20km以上先。人家の明かりはなく、街灯だって一つも見当たらない。傾斜がキツい峠道の道沿いにはジャングルのように木々が覆い茂っている。森の中からけたたましく鳴く夏虫の声に混ざって「キイーキイー」と獣のような声もする。声のする方向へスマホのライトを向ける。無数の目が反射して光った。 「獣(じゅう)やん!」 ここから一刻も早く走り去りたい。 購入したばかりのライトは30分前に突如点かなくなった。しっかりと充電したのになぜだ。ライトが消えるとほとんど何も見えない。 田舎の山道、本当の暗闇。その暗闇と相対するように反響する虫や動物の大合唱が、不気味さを増幅させる。 スマホのライトを頼りになんとか前を照らすが、夜の山道を走行するのに十分な明るさとは言えない。 自転車に取り付けた
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