今度結婚する人と会ってほしい、と母は言った。 11月のある日、私は北関東のある別荘地へ向かっていた。 母の結婚は3度目だった。 私は、うんざりだった。 大阪から交通機関を乗り継ぎ、 半日かけて指定された場所に着く。 場所は、古い小屋のような一軒家だったが、 それについては何の説明もなかった。 弟は先に着いていたが、 だれもが、お互いに目を合わせず押し黙っていた。 初対面のその男性と私も、 目を合わせず名乗りあった。 無言の時間が過ぎて、そのまま日が沈み、 鍋を囲んで食事をしよう、と男性が提案した。 母は黙って支度をしたが、 知らない男性と同じ鍋をつつくのは気が進まない。 沈黙に耐え切れないように、男性が言葉を発する。 「君のお母さんがどれだけ苦労して君を大学まで卒業させたか、よく聞いているよ」 母が、彼に聞かせていたのは、 自分がいかに苦労して息子たちを育てたか、という だれにもたしかめよ
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