妻がメシ作りたくない病を発症した。 何故かすき家に三人して来てしまった。 まあ良いか、祭りだし。 なんて考えてると、4歳になる娘が 「ぱぱ、あの人食べるのすんごくはやいよ」って俺に言う。 見るとカウンターには二十代前半とおぼしきスーツ姿の男が牛丼をかき込んでる姿が。 あれは俺だ、昔の俺だ、何にも考えず、ただがむしゃらに仕事して、未来の事とか幸せが何なのかとかから敢えて目を背けて、孤独を貪って世の中拗ねて生きてた頃の… そんな俺の妄想に気付いているのかいないのか、男は尚一層のスピードで丼を空にし、ぼそりとご馳走様と告げると伝票を片手にレジへ向かった。 俺が娘に 「牛丼はああやって食べるのが作法なんだよ、特に一人の時はね」 って教えたら、妻が何馬鹿な事言ってるのって鼻で笑った。 もう家族で牛丼屋に来るのは止めよう。
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