明治あたりのレシピ本には火加減がほとんど出てこない。大正時代のレシピでも火加減はこういう感じ。 『ゆるゆると煮』 この他に、ぽち火というのもあるけれど、強火、弱火という表現はほぼない。なぜに火加減についての言及がないのかというと、当時の台所が貧弱だったからである。まだ木炭が主流で、火力の調整もままならない。それでもなんとか改善しようと色々な人々が努力をしていた。 これは明治35年の製品、煙が少なくエネルギー効率の良さがアピールされている。火力の調整よりも効率や安全性を追い求めていた時代だ。 もうひとつ明治42年の炒牛肉のレシピを紹介してみよう。 『炒める』という表現ではなくて『煎る』となっている。料理をする人は、このレシピだとちょっと味のボヤけたものになるんじゃないのかっていう疑問を持つかもしれない。これは恐らく当時の家庭環境に合せて最適化したレシピなんだろうと思う。調理環境はもちろんのこ