クラウドファンディングによる出版プロジェクトが進められていた、故・渡辺保史さんの遺稿集『Designing Ours:「自分たち事」のデザイン』がようやく完成し、先週末に私の手元にも本が届いた。この本は2011年から2012年にかけて渡辺さんが執筆していた単行本用の未定稿を編集し、事前予約制により限定出版したもので、一般向けに市販されることはないという。そこで渡辺さんと多少なりともご縁があった者として、この本に込められた故人の思いを受け止めつつ、自分なりの感想を綴ってみたい。 「情報」のデザインと編集 渡辺保史さんは、「情報デザイン」という言葉を自身の活動の中心に置いていた研究者/教育者である。最初に渡辺さんとお会いしたのは、彼がフリーランスのライターとして活動をしていた頃で、私は1990年代に刊行されていた最初の「ワイアード日本版」(現インフォバーンの小林弘人氏が編集長)の編集部にいた。