知識人と呼ばれる人々はたいてい、ベストセラーがお嫌いである。たまに読んでも、まずほとんどが、 「(いやいやながら)読んではみたがなにほどの内容もない。なんで大衆はこんなレベルの低いものを喜ぶのか」 というようなお叱(しか)りがほとんどである。……しかし、これはベストセラーの本質をわかっていない言である。ベストセラーがベストセラーたり得ているのは、内容ではなく、社会の基層に蔓延(まんえん)した“感情”をすくいあげていることが、大抵の場合その理由だからである。オイルショックによる社会不安が『ノストラダムスの大予言』をベストセラーにし、団塊の世代を中心とした中高年層の老いへのあせりが渡辺淳一の不倫小説をベストセラーにする。これらはその時点時点での日本の大多数の国民感情を映した鏡なのである。 その意味で、最近話題の『マンガ嫌韓流』を取り上げる際には、その内容の分析よりも、こういう本がベストセラーに