サンデー毎日連載 茂木健一郎 歴史エッセイ 『文明の星時間』 第52回 未知の贈りもの サンデー毎日 2009年3月1日号 http://www.mainichi.co.jp/syuppan/sunday/ 抜粋 自分の今までの世界観では対処できない何ものかに出会った時に、どのような態度をとるか。頑なに拒絶してしまうのか、それとも、心を開いて受容するか。その魂の態度に、人となりが現れる。 南アフリカ生まれの生物学者ライアル・ワトソン。その著書『未知の贈りもの』は、読む者をインスパイアする力にあふれている。インドネシアの島を調査していたワトソンは、ある夜舟で海に出る。気が付くと、自分たちの下の海が輝いている。発光するイカの群れであった。 この世のものとは思えない美しい光景に圧倒されながら、ワトソンは考える。イカの眼球のレンズは精巧に出来ている。一方、その中枢神経系は貧弱である。映る世界の一部