前回の本コラムでは「トップダウンは絶対か」の前編として、ホンダ時代経験した技術論議を紹介した。創業者である本田宗一郎氏の掲げていた「技術論議に上下関係はなし」との考えとは裏腹に、実際は明確な上下関係が存在していたこと、その状況を打破することが技術者としての気質であることを論じた。 その後編となる今回は、韓国サムスングループに場面を移して考えてみたい。ご存じの読者も多いと思うが、韓国は儒教思想に基づく上下関係の厳しい世界。エリートが集まってくるサムスングループでも上下関係は存在し、しかもそれは日本の比ではない。 まず、研究開発の現場で技術論議になる場合はほとんどない。研究開発を統括するチーム長(専務や常務などの役員)の意向で、研究開発の方向性などの様々な決定が下されていく。チーム長が間違った判断をすれば、開発が失敗する可能性もある。チーム長には精度高く成功に導く戦略と考えが問われることになる