彼岸花は、自然の賜物であると同時に文化の賜物でもあると思う。 なぜならどんなに美しくとも、どんなに生き生きと咲いていても、故人を、過去を思い出させるからだ。2023年の彼岸も、私はそうやってメランコリックなことを考えながら過ごしていた。 ちょうどそのタイミングで過去を振り返る書籍に出会った。ライター・編集者の速水健朗氏が著わした『1973年に生まれて』だ。氏は私と同じ石川県出身で、年齢は私より少しだけ上、といったところだ。昭和の残滓を透かし見るべく、私は『1973年に生まれて』を手に取った。 ところがこの本、私の記憶とちょっと違った昭和を映し出していた。 ちなみに我が家は、母親は専業主婦。父親(46年生まれ)はサラリーマン。子どもは2人とも団塊ジュニア世代。核家族で団地(のちにマンション)暮らし、マイカー族。日曜日にはドライブに出かけ、帰りにロードサイドのファミレスで食事をする。まるでサン
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