ある年の夏、わたしはブルゴーニュ大学の夏季語学研修プログラムに参加していた。この留学がわたしの語学能力を向上させたかどうかははなはだ不明であるが、次の年、ゼミを選ぶのに「文学」ではなく「美術」を選んだことには大いに関係してくる。 その研修には、フランス各地の名所旧跡をバスで見て回るというオプションがあった。 お伽話の世界そのままのロワールのお城、こぶりながら完璧な形のローマ遺跡の数々、山上の中世都市、ゴッホの描いた向日葵咲くプロヴァンスなどなど……いま思えば、そこは『ユネスコ世界遺産』に相当する場所であった(つまり、その説明があったのだろうにわたしはソレを聞き逃していたらしい)。 そうしたあちらこちらを巡るなか、わたしはいつの間にか教会の柱頭彫刻やタンパンの図像にすっかりはまっていた。はるか昔に読んだバルトルシャイティスの『幻想の中世』のわけのわからない魅力、あの不可思議なものたちへの愛を
![天使の羽に触れるとき――辻佐保子『天使の舞いおりるところ』岩波書店(1990年) - がらくた銀河](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/daf75471a30686d5ec21d0a4be93c49b0be3849d/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Fecx.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F41zWlpXx25L.jpg)