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エリゼ公国には山がない。 遮るもののない空の下、緩やかな起伏を描く丘がどこまでも続き、その間を蛇行する河が流れている。この河の恵みこそが、この国の栄華の基礎となった。 街から河岸をいくらか下ると、崖に横穴を掘って住むひとびとがいる。 そこは光のあたらぬ住居ではあるが、慣れてしまえば気温が安定して住み心地がいい。もちろん、葡萄酒の貯蔵庫としても最高だ。 菫の家とは、そうした葡萄酒の貯蔵庫兼横穴住居のひとつだった。 帝都に旅立たれるエリス姫に、菫の香りのする葡萄酒を貯蔵していた場所ごと私がさしあげたものだ。ここに納められるべき樽は、毎年きちんと帝都にあげられるよう手配した。 《黄金なす丘》で収穫される葡萄酒の木苺の香りより、姫さまは普段はこちらを好まれたのだ。 今日の姫さまは、喪の色ながら裳裾をひいていた。よくよく見れば葬祭長としての簡易式服であったが、襟と袖には雪よりも白いレースがふんだんに
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