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2013年10月30日のブックマーク (18件)

  • 遍愛日記 - 19

    「うん。そうなんだけど……」 自分でも、なにをどう訊いたらいいのか、わからなくなった。浅倉くんは女の子みたいに気もつくし、それでいて神経質なタイプじゃないから共同生活に向いている。ミズキさんがなんで彼と一緒に住んでいるのかは、福利厚生という理由のほかに下心があるせいだろうかなどと、そういうことをここで詮索するのは下種にすぎるという自覚もある。というか、そもそも、私はふたりの関係を今さら問い質したいのか? たぶん、これまた臆病で卑怯な考え方だけど、浅倉くんがほんとのところ、ミズキさんをどう思っているのかちゃんと知りたいのだ。 ただし、それを尋ねても、このオトコはまともにこたえないだろうとも予測できた。ストレートなようで、そういう微妙なとこはいつもしっかりガードしてみせるのだ。ということを、思い出した。 学生時代、私がふった後も、浅倉くんはどこにそんな器用さがあるのかというくらいの身振りで、何

    遍愛日記 - 19
    florentine
    florentine 2013/10/30
    ちっさな頃は、卑怯だとか臆病だとか言われるなら死んだほうがましだと本気で思っていた。死をも恐れず悪と立ち向かうヒーローになりたいと願っていたはずなのに。いったいいつから、こんなに怠惰で人任せでずるくな
  • 歓びの野は死の色す - 11

    目がさめて、さいしょに気がついたのは饐えた汗の臭いだった。黄ばんだ埃まみれの亜麻の敷布に頬があたっていて、おれはぞっとする思いで頭をおこした。 後ろ手に縛られて寝かされていたのはまがりなりにも寝台で、服は男物のままで、乱れてはいない。ただし、腰の短剣は吊り帯ごと奪われていた。隠しの財布もない。 おれがはじめに感じたのは不安でも恐怖でもなく、凄まじいまでの憤りだった。 危うく声をあげてしまいそうなほどの瞋恚に荒くなった呼吸をおさえ、じっと耐えた。 口を緘されていなかったということは、声をあげれば助けがくるわけではないということか。 虜囚の辱めを受けるのは何もこれが初めてというわけではない。 おれはそう思うことで自分を立て直した。 拳を当てられたみぞおちがキリキリ痛み、吐き気に襲われながら頭をめぐらすと、窓の隙間からもれる光の筋に埃が舞っているのが見えた。 幾重にも板を渡された窓枠はどうやら古

    歓びの野は死の色す - 11
    florentine
    florentine 2013/10/30
    虜囚の辱めを受けるのは何もこれが初めてというわけではない。おれはそう思うことで自分を立て直した。 #小説 #アルファポリス #小説家になろう
  • 夢のように、おりてくるもの - 20

    「あれを恋愛とはとうてい呼べませんでした。一方的なものでしたから。しかも徹底して隠された、文字通り隠微な関係でしかなかった。それに、あのひとはおれを好きだといちども言わなかった。亡くなったのも、ある意味じゃおれが追い込んだようなものです。病死でしたが、無理やり医者に連れて行けば助かったかもしれない。あのひとはたしかに世間で云うところの性的にふしだらなタイプのひとでした。誰彼問わず寝ていた。おれ以外にも少しばかり触られたこどもはいたようです。世間では、彼は性犯罪者以外の何者でもないのでしょう。それでもみな黙ってました。おれの知る限りでは容認されていた。嫌がることはけっしてしないひとだった。そのこととは関係なく、ごく一部の大人には煙たがられていましたが、みなに好かれて、尊敬もされてました。彼のほうもみなを好いていた。けれどおれのことは怖がった。おれがこどもで、あのひとを真剣に好きだったから」

    夢のように、おりてくるもの - 20
    florentine
    florentine 2013/10/30
    おれは、あのひとに何もしてあげられなかった。あのひとからただ奪うだけで、縋りついて、ねだるばかりだった。欲しがることしかできなくて、困らせた。きっと追い詰めたし、苦しめた。
  • 【レポート】手塚治虫が飢死するほど多様性を好む日本人」 - FREEexなう。

    <岡田>この国は『ブラックジャック』がヒットしなかったら“手塚治虫”が飢え死にしてたかもわかんないぐらい、実は“古くなるのが早い国”なんですよ。 <小飼>そう。だからアレなんですよ。手塚が新作を出し続けるという、恐ろしい国ですよね。 ************************************ 「手塚治虫のヒロインの中で一番好きなキャラクターをあげろ」と言われ「ムーピー」と答えたら軽蔑の目で見られたことのある佐藤家清です。 全4回に渡ってお届けする2013年8月10日に行われた出版シンポジウム「電子出版ノススメ〜鈴木みそ×小飼弾×岡田斗司夫〜」の第3回目です。 「copyright」と「著作権」という言葉の違いから、「未来の電子書籍」の話など、興味深い話が飛び出しましたが、今回は日人が求めてる多様性の欠点とおもしろさを語った部分をダイジェストでお送りします。 「電子出版ノスス

  • It's better than Tinder!

    04:59 It's better than Tinder! Are you looking for a men or a women? Men Women What's your gender? Men Women Are you older than 18 years? Yes No Do you agree to use a condom when having sex with a partner you meet on our site? Yes No You may now see our list and photos of women who are in your area. Again, please keep their identity a secret. Continue Unsubscribe

  • 筑摩書房 わが夢の女 / マッシモ・ボンテンペルリ 著, 岩崎 純孝 著

    自分の頭蓋骨をとりだした男の話、患者に模した蝋人形で患部を治療する医者の話、賭ルーレットの数字をピタリと当てる男の話等々ナンセンスの中にアブノーマルなグロテスクさの満ちた短篇群。現代イタリア作家の中で最も評価することの難しい作家といわれる、異才マッシモ・ボンテンペルリの戦後初のまとまった短篇集。まことに奇妙キテレツ・痛快な一冊である。佐々木マキの挿画入りで贈る、文庫版オリジナル。 隊伍中の叛逆者 わが夢の女 恋人のように 鏡 細心奇譚 便利な治療 デンマーク劇場史のために 死亡 アフリカでの私 世界一周 瞑想の機械 陸と海との冒険 バーで会った男 ベートーヴェンの仮面 大洪水 順風 秣と藁 頭蓋骨に描かれた絵 私が所有している彫像 太陽を凝視する 海の寛大さ 信じやすい少女の心 太陽の中の女―ブルジョワの散歩

  • 編者に聞く(2)

  • トークストック2013・前哨戦「ベートーベンくん、危機一髪!」

  • T-BOX 2010/12/13 B

    florentine
    florentine 2013/10/30
    長野順子カレンダー 原画展(2011年版) 階段とかアリスとかうさぎとか好きな方は是非v
  • 職場うつ病の原因が過労でなく上司や職場環境であることを示す研究が発表される

    By katiew 今まで職場うつ病は、仕事のプレッシャーや多すぎる仕事量に関係していると考える傾向があったようですが、ノルウェーにあるオルフス大学の臨床医学学科の研究チームが、職場うつ病の原因は「嫌な上司」や「平等でない職場環境」にあることを示す研究を発表しました。 A two-year follow-up study of ri... [Scand J Work Environ Health. 2012] - PubMed - NCBI http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22885721 Work-unit measures of organisational justi... [Occup Environ Med. 2013] - PubMed - NCBI http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23476045 A

    職場うつ病の原因が過労でなく上司や職場環境であることを示す研究が発表される
  • 編者に聞く(1)

    デイヴィッドスンとの出会い ——まず、アヴラム・デイヴィッドスンに興味を持ったきっかけを教えてください。 殊能 いちばん最初は、もう20年くらい前だけど、いまは亡き神保町の東京泰文社という古屋でThe Enquiries of Doctor Eszterhazy(1975)を買ったのがきっかけね。そのときは確か、"Polly Charms, The Sleeping Woman"は読んだんだけど、よくわからなかったんですよ。で、ずっとほうっておいた。 それから20年くらいたって、アメリカのWildside Pressというスモールプレスが、デイヴィッドスンの長編を大量にリプリントしたんですよ。それで、まずMasters of the Maze(1965)を買ったの。 ——なぜ買ったんですか。 殊能 これまた20年以上前の話なんだけど(笑)、〈SFマガジン〉の確か「海外SF事情」欄で、小川

  • 『スター・ウォーズ』傑作NGを集めた動画

  • ハイデッガー Heidegger 技術論・ニーチェ論

    KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion 中沢新一さんも原発に何を対置するのかが我々はまだ分かっていないと言ってた。彼もそれを探しているのだろう。俺も探している。俺にとってのヒントはハイデッガーであり、ハイデッガーが注目していたイオニアの自然哲学、そしてフュシス(自然)の概念だ。こう書くと大袈裟に聞こえるかもしれないが。 KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion しかし勤務校の哲学入門の授業では、ソクラテス以前の哲学者を解説しつつ、原発の話(まぁ、広くは技術論だけど)をするという離れ業をやり、しかも二〇〇人を超える学生がきちんとそれを聞いてくれた。こういうところに希望があるよ。だって経済学部の学生がアナクシマンドロスに興奮するんだ。

    ハイデッガー Heidegger 技術論・ニーチェ論
  • #285 オペラつながり - nameless pictures

  • 遍愛日記 - 18

    並木通りを歩いていると、地図を開いて立ち止まる金髪碧眼のバックパッカー三人と目が合ってしまった。 私の特技は、日にいようが海外にいようが関係なく、ひとに何かを尋ねられることだ。年齢も人種も言語も飛び越えた、人類に共通する普遍的な「話しかけやすさ」というのが備わっているらしい。 さて、新橋のホテルに行くのに有楽町駅へ案内してお役御免とするか、いかにも歩きそうなひとたちなので道順を示すべきか悩む。差し出された地図をのぞきこんだところで後ろから、スーツ姿の男のひとに腕をとられた。ぎょっとして顔をあげると浅倉くんだった。 彼はすぐ話しをきいて、現在位置と目的地をさししめす。私のカタカナ英語とはえらい違いだ。聞かれたかと思うと恥ずかしい。ろくに役立たなかった私にもちゃんとお礼をいって三人が手をふって去っていくと、彼は私に向きなおった。 「なんか、変なとこで会いましたね」 待ち合わせ場所の手前で会う

    遍愛日記 - 18
    florentine
    florentine 2013/10/30
    私の特技は、日本にいようが海外にいようが関係なく、ひとに何かを尋ねられることだ。年齢も人種も言語も飛び越えた、人類に共通する普遍的な「話しかけやすさ」というのが備わっているらしい。
  • 歓びの野は死の色す - 10

    「何故、神殿騎士を手配しないのですか?」 「それは伯爵もお察しのことでしょう」 「エリス姫の御無事を確認すること以上に優先すべきことがありますか?」 それを聞いた宰相は、声をあげて笑い出した。 「ゾイゼ宰相」 私の視線に、彼は笑いを納めて頭をさげた。 「失礼。私個人としてはそう思いたいと願いますが、公国の将来を憂えればそうとは言えませんな」 「あの方を犠牲にして、いったい何を守られるというのですかっ」 「あなただとて十年前、御自分の将来と領民のことを思い、エリス姫を諦められたのではないですか? またつい先日は、モーリア王国の王女との婚姻でさえ了承した身ではありませんか? 今は、この国の存亡がかかっているのです。 私はオルフェ殿下が進められたこの取引自体をとやかく言いたくはありませんな」 エリス姫……! 私は拳を握り締め、手を振り上げそうになるのを堪えた。ここで彼を殴り倒して闇雲に城を出ても

    歓びの野は死の色す - 10
    florentine
    florentine 2013/10/30
    「愛する方をお守りするのは剣だけとは限りませんよ」宰相は武器を手にすることのない《死の女神》の神官とも思えぬ堂々たる扱いで御付の手から剣を取り上げ、それを私に授けた。#小説 #アルファポリス #小説家にな
  • 夢のように、おりてくるもの - 19

    その指にかるく歯を立てると肩が揺れ、堪えきれぬようすで声が漏れた。悪くなかった。あわてて口を覆った仕種も。反応を窺われるさまが羞恥にかわり、頬や目許を鮮やかに染めていく血の逸りも。それらがこちらをも追い立てる。 ところが、わたしの顔を見つめようとするのは応答のためではなさそうだった。わたしは、彼がなにか言おうと口を開きかけるたびに柔く、または強く指を舌で絡めた。逡巡があるのを見て取りながら、わたしはそれを傲然と無視した。問われたくなかった。いまこの気分のときに。小さなテーブルが邪魔だと思う、この熱をさましたくなかったのだ。 手首を引いて抱き寄せようとすると、彼は、ちょっとタイムと声をあげた。手放す気はなかったが予期せぬ力強さで引き抜かれた。相手がたおやめではないと思い知る。むろん忘れてはいない。だが、容易に押し伏せることがかなわないと知るのはまた別の意味で気が急いた。やさしく接してやらねば

    夢のように、おりてくるもの - 19
    florentine
    florentine 2013/10/30
    「そういう意味です。つまり、七歳から中学校二年まで、おれはそのひとと性的な関係を持っていたということです」#小説 #アルファポリス #小説家になろう
  • 注目新刊:ブランショ『カフカからカフカへ』書肆心水、ほか | URGT-B(ウラゲツブログ)

    弊社出版物の著訳者の皆さんの最近のご活躍や、弊社出版物に関する書評、広告についてお知らせします。 ★安原伸一朗さん(訳書:ブランショ『問われる知識人』、共訳:『ブランショ政治論集』) 20世紀フランスの作家・編集者であるジャン・ポーラン(Jean Paulhan, 1884-1968)の著書、Entretien sur des faits divers(Gallimard, 1945) の訳書を上梓されました。目次詳細は書名のリンク先をご参照ください。版元さんの内容紹介によれば「ポーランが友人と交わした対話を素材に、精神と言語の最深部にひそむ神秘を軽妙に語り合う対談仕立てのエッセー」とのこと。友人というのは、ルネ・マルタン(ルネ・マルタン=グリオ)のこと。巻末には安原さんによる懇切な解説が収められています。 百フランのための殺人犯――三面記事をめぐる対談 ジャン・ポーラン著 安原伸一朗訳

    注目新刊:ブランショ『カフカからカフカへ』書肆心水、ほか | URGT-B(ウラゲツブログ)