「待ってください。わたしは依頼人の家に必ず泊まるわけではありませんし、それより何よりご承知でしょうけれど、わたしは女性ではありませんよ?」 いまの言葉から察するに、彼はきっと、わたしが依頼を受けるたびに依頼人と一晩過ごすのだと思っていたのだろう。それは完璧な誤解だし、とりようによっては古からつづく典型的な「夢使い」への偏見と侮辱にも成り得る。 それについてどう話したらいいか考えようとして、彼の眉が真ん中に寄せられていることに気がついた。それは、不快なものを見せられた表明だと思っていたが、先ほどの彼の言葉から類推すれば、それは純粋に苦痛と悲哀の表現だった。 彼が、こちらの視線をよけるように項垂れたのを目にして、愕然とした。わたしもまた、男性が好きになるのは女性だという、偏見をもっていたということに。 夢使いでないひとが香音を聞き分けることができないように、わたしが知らなかっただけで、見えてい