その来訪を知らされたのは、昨日のことだ。 次期葬祭長たるこの僕、オルフェ七世にこんな間際まで知らせがないのは何かの陰謀かと声をあげて教団本部を糾弾すべきだったように思う。 《夜》を目前に、古神殿に引きこもったままの僕には、世間の情報はなにも入ってこない。集中のため、外出はおろか連載小説の続きが気になって仕方がない新聞でさえ差し押さえられているのだから! そうやって心の底から腹をたてていたはずなのに、僕ときたらアンリエットのあのすまし顔になにひとつ言い返すことができなかっただけでなく、多忙の公爵――つまり僕の双子の兄――にかわって、タチバナ卿ご一行を古神殿に案内する役目まで仰せつかってしまったのだ。 僕だって東の彼方の鳥首国がどんな国かは知っている。大陸列強が手薬煉をひいて待ち構えている神秘の王国だ。兄がかの国と条約を結ぶべく多大な力を尽くしたことも理解しているつもりだ。それに、この古神殿の