(2013年9月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) ドイツ総選挙で保守与党が大勝し、メルケル首相は歴史的な3選を決めた〔AFPBB News〕 ドイツのアンゲラ・メルケル首相の政治における成功を分析する評論家たちは使い古された見方に頼りがちだ。 首相は慎重な現実主義者だとか、試行錯誤しながら歩みを進める科学者だとか、人を安心させる母親のような存在だとか、有権者と直感的に意思疎通できる天性の政治家だといった具合だ。 いずれも正しい指摘である。しかし、とても重要な点が1つ抜け落ちている。政治家としてのメルケル氏はビジョナリーでもあるという点だ。ぞっとするような場面も時折あったあの通貨危機の真っただ中にありながら、メルケル氏はドイツと欧州連合(EU)との関係を今よりも持続可能な新しい観点から定義し直したのである。 政治家のメルケル氏がビジョナリーだと認識されていないのは、その政治スタイルが