「サロメの乳母の話」塩野七生(新潮文庫) 塩野七生によるサロメは魔性の女などではなく、ユダヤの民衆や父親であるヘロデ王思いの頭の賢い理知的で、かつその美貌も世界を支配していたローマ人も注目するほどの女性とその設定を変えて、彼女を世話した乳母の言葉によって人物像を浮かび上がらせる手法をとっています。 舞台となったサロメがいるユダヤの地は、当時ローマ帝国の支配下にあり、ユダヤの各地で説法をとく預言者ヨハネはヘロデ王にとっては非常に頭が痛い存在。また自身もユダヤ人でもありヨハネをの存在を信じたい気持ちもある心優しい人物に描かれています。ローマ人を招いての宴も、田舎の余興では盛り上がらず王はサロメに踊りを披露するよう申し出ます。それは何とかローマ人を冷え込ませてはならないという、立場の弱さからくる苦肉の策。サロメは快く七つのヴェールの舞を見せ、ローマ人も賛嘆、ヘロデ王はホッと一息つくも、肝心要のヨ