近年、従業員の健康を守ることで労働生産性を上げる「健康経営」という考え方が、大手企業を中心に広まりつつある。それに、呼応するように、働く人の健康を守る専門家「産業医」の活躍に期待が寄せられている。しかし、健康増進につながっているケースは一部に限定され、キーマンとなる「産業医」が機能不全に陥っている。 今回は、『企業にはびこる名ばかり産業医』(幻冬舎)を紹介したい。著者は、鈴木友紀夫さん。医師と医療機関の人材マッチングを展開する、(株)エムステージの役員でもある。本書では「産業保健制度の概要」と「事業所と医師の側から見た問題点」を分析・整理。これからの産業保健のあるべき姿を提言している。 「名義貸し」が横行する理由 中小事業所を中心に、産業医の「名義貸し」が幅広く行われている。「名義貸し」とは、産業医の名前の届出はあるけれど、ほとんど産業医の活動実績がない状況を指す。 「日本医師会の『産業医