インドの農民は、天気の話ばかりしている。5月になると、大地はかまどのように焼けつき、畑はどこも黄色く干からびる。井戸は涸(か)れ、それをあざ笑うように灼熱の太陽が照りつける。そんな時、農民たちが話題にするのが、いつ、どのようにして夏のモンスーンが到来するかということだ。ただ、ことあるごとに話にのぼるわりには、確実性に欠ける話題だ。 モンスーンは例年6月初めにやってきて、それから4カ月弱の間に、この国の年間降水量の4分の3以上に当たる雨を降らせる。農民たちの表現を借りれば、モンスーンは“最初はシカのようにやさしく始まり、やがて怒りくるったゾウになる”という。ただし、ゾウで始まってシカになることもあるし、“ニワトリのように”先の読めない困った降り方をすることもある。要するに、誰にも予測できないのだ。それでも誰もがモンスーンを話題にせずにいられない。 2008年5月中旬、インド西部の大都市、ムン
(英エコノミスト誌 2009年8月22日号) 古代からの呪いがインドを襲う インド北部ウッタルプラディッシュ州の農婦シャルミーラ・シャルマさんは、義理の姉妹3人と水牛6頭とともにニームの樹の大きな木陰でぶらぶらしている。1エーカー(0.4ヘクタール)余りある農地から彼女らを遠ざけているのは酷熱ではない。インドの大半の農家と同様、シャルマ一家も潅漑施設を利用することができないのだ。 彼女たちにとって6月から9月にかけて降るモンスーンの雨は頼みの綱だ。だが今年はその雨が降らない。「雨が降らなければ、どうしようもない」。シャルミーラさんは緋色のサリーの端でハエを払いながら、こう語る。 モンスーンの雨に依存する農家 一家は主要な農作物であるソルガムの植え付けができずにいるうえ、水牛も「病気」になりかかっている――飢えの婉曲表現――という。 インドは今年、ここ何年もなかった最悪のモンスー
インド・アムリツァル(Amritsar)で雨の中人力車をこぐ男性(2009年7月24日撮影)。(c)AFP/NARINDER NANU 【7月25日 AFP】インド政府は24日、モンスーン期の降雨が少なく稲作に影響が出ているとして、食糧不足を回避するため食糧の輸出を禁止すると発表した。 シャラド・パワル(Sharad Pawar)農相は議会での農業生産に関する議論で、6-9月のモンスーン期の雨量が全国で不足しており、主要農業州である北部のパンジャブ(Punjab)州やハリヤナ(Haryana)で田植えが遅れていると述べた。降水量は前年と比べて全国で19%、北西部で38%、北東部で43%少なくなっている。 同国の耕作可能な1億4000万ヘクタールの土地の60%が水源を雨に頼っているため、モンスーン期の雨量は死活問題だ。 インドでは依然、11億人の国民の3分の2近くが農業で生計を立てており、農
インド北部の農業地帯に2エーカーの農地を持つシャイフル・ラフマンさんは、生まれてこの方ずっと、水の供給源がどんどん地下深くに沈んでいくのを見てきた。 「子供の頃は、水は地下15フィート(5メートル)のところにあった」とラーマンさん。「55歳になった今、雨がずっと少なくなり、帯水層の水面は地下90フィートまで下がった」 2年前、ラーマンさんは10万ルピー(2080ドル)を投じて深さ220フィートの井戸を掘った。先代から引き継いだ深さ70フィートの井戸が枯れてしまったからだ。 米の一大生産地であるパンジャブ州では、水を大量に使う稲作が地元の水資源を食いつぶしてきたために、多くの農家が同じくらい深い井戸を掘っている。 農家や都市部の水不足は、インド全域でかねて懸念されてきたが、今年は弱いモンスーンのせいで一段と深刻なものとなっている。モンスーンの到来が遅かったうえに、降雨量が少ないのだ。
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