諭吉ときたら、いつまで待たせれば気が済むのかしら。 私はこうしてずっと待っているのに。 他の男に目移りしたことは認める。 だって、英世はいつもそばにいてくれるし。 気軽に呼べるものだから、気軽にいつも「さようなら」を言ってしまうの。 親友の樋口はよく、気がついたら英世に交替している。 二千円札に至っては、もう顔も思い出せない。 そもそも顔すらなかった気もするけれど。 私はあなた方にとって、居心地のいい女ではないかもしれない。 英世のことを間違って、漱石と呼んでしまうこともある。 最低な女よね、あたし。 気がついたら、私のそばには、丸っこいものばかり。 ねえ、諭吉。 あなたは旅に出ると行って、なかなか帰って来ないけれど。 もう少ししたら、一回り大きくなって、きっと戻ってくるのよね? あなたと来たら寂しがりやのくせに、すぐ外の世界へ行ってしまう。 仲間がたくさん集まっているところが好きで、いつ