おれの電話帳は電話帳ではない。ハーフライフの遺書のようだよ。もう通じない番号がかなり多い。疎遠になったまま番号がわからないひと、死んだひと、転居したひと、なくなった会社、そういう番号を消す習慣がなく、むしろまだ通じる番号はサクサク消す。だから、たぶんこのままいけば、いずれおれの電話帳は通じない番号であふれかえる。いまでも、通じる番号のほうが少ないかもしれない。 やはり通じない電話番号は電話番号とはいえない。過去、おれに関係のあったなにかの痕跡を示す暗号のリストだ。おれにしか意味がなく、おれにも役立たない。そういうものを携帯するようになったのは、データには重さがないからだが、これを書いている今もうそれがわかったから、仮に重さがあっても手放せなくなっているかもしれない。過去を省みる機会とかそんなにないわけだけど、いつ省みてもいいように持っとくって感覚は、iPod の容量増えて「持ってる曲全部持