「プロ野球界が成り立つために、一番大事な仕事をしている人って誰なのか、君はわかるか?」 私は答えに窮した。5年前。伝説の「400勝投手」金田正一さんにインタビューする機会に恵まれた。20代の頃は伝説の文化系野球本「おしゃれ野球批評」(DAI-X出版)に収録されたプロ書評家・吉田豪さんによる「カネやん本書評」を繰り返し読んで、豪放磊落な発言と野球観に魅了されたものである。 この日も野球界の現状について、はちゃめちゃな談話を引き出し、派手な見出しが立てられたらいいなと、申し込んだ取材だった。 金田さんは続けた。 「スカウトだよ」 球界最強エースに君臨し、監督としても日本一に上り詰め、プロ野球のオン・ザ・サニーサイドを歩き続けた男。その口から放たれた言葉は意外すぎるものだった。 「スカウトはな、縁の下の存在だけど、夏の暑い時も冬の寒い時も1年間、必死に選手を見定めて、逸材を発掘して、野球界の歴史