文化工作、国策に加担 先の戦争に日本の仏教はどのように関わっていったのか。文化庁宗務課の専門職に就く宗教学研究者、大澤広嗣さん(40)が、特に南方、東南アジアでの仏教界の活動に注目し、研究成果を『戦時下の日本仏教と南方地域』(法蔵館)にまとめた。当時の日本政府の施策からひもとき、宗教が戦争に加担していく姿を明らかにしている。【棚部秀行】 「仏教学では近代は重要な研究対象ではありませんでした。特定宗派の仏教者が、戦争協力を道徳的に批判した研究はあったものの、結論ありきで物足りない。戦後70年以上が過ぎ、ようやく実証的に戦争と仏教を論じる時期が来たと考えています」