野坂昭如自身の戦時体験を参考にした小説『火垂るの墓』は、1988年に高畑勲監督の手でアニメ映画化された。 戦時中の兵庫県を舞台にして、両親を失って親戚の家に同居することになった兄妹、清太と節子。しかし貧しい共同生活になじめず、ふたりで家を出て防空壕に住みつく。物資が欠乏するなかで終戦をむかえるも、それぞれ間もなく衰弱死した。 そうした一夏の記憶を、死者の回想として描いている。 この物語で兄妹が亡くなった原因について、定見がないまま親戚の家を飛び出した兄の責任を問う意見がある。そうでなくても、主人公の設定がかなり特殊なのではという指摘は多い。 もちろん、両親を死にいたらしめた戦争を始めたのが大人だとか、子供が愚行をおこなっても社会が保護するべきだとか、どれほど重い罪でも死ぬほどの罰が与えられるべきではないとか、そうした反論はいくらでもできる。 その上で、主人公の愚行にどのような意味があるのか