今年は僕の読書的には当たり年だ。 このアントニオ・ダマシオの『進化の意外な順序』も当たりだった。 人間の意識というものを、冷たい電気のパルスのようなものに還元してしまわずに、生物が蠢きながら行う化学的なやりとりとも切ってはきれないものであることを暴くことで、哲学的な二元論の伝統を破壊するという、きわめて僕好みな内容だったからだ。 その意味で、内容は、タイトルである「進化の意外な順序」よりも副題である「感情、意識、創造性と文化の起源」のほうがそれを表している。 感情や意識や創造性に文化と並んでしまうと人間にフォーカスが当たっているように思えるが、そうではない。「起源」とあるように、感情や意識がどこから来たかという問いに対する回答が、細菌や社会性昆虫などの地点から語られる。 「意外な順序」といわれるのは、文化的な社会につながりそうな利他的な活動の選択が、心を持たないはずの単純な動物にも「協調」
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