「なんで澤田さんだけが……」 2002年5月に開かれた緊急役員会。駐在先のロンドンから駆けつけた玉塚元一は耳を疑った。自分をユニクロに引っ張ってきた張本人であり、20代の頃から兄貴分と慕ってきた澤田貴司が経営不振の責任を取って副社長を退任するという。 何も知らされていなかった玉塚はその場で激高した。思えば、柳井の目の前でこれほど怒りをあらわにしたのは、後にも先にもこの時だけだろう。 「おかしいじゃないですか。なんでこんなことになるんですか。こうなったのはここにいる俺たち全員のせいでしょ。それなのになんで澤田さんだけが……。澤田さんだけが責任を取るって、どういうことですか! 俺にはこんなの、到底納得できないですよ!」 一同が黙りこくる。時間が止まったかのような張り詰めた空気を破ったのは、澤田の一喝だった。視線を玉塚に向けると、大声でまくし立てた。 「おいゲン! お前、いいかげんにしろよ!」
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