ドイツのF.L.ヤーンが19世紀初期に創始した体操,教育者J.C.F.グーツ・ムーツの思想をくむものであるが,P.H.リングが健康な身体をつくることを目標としたスウェーデン体操を始めたのに対し,ヤーンは人間の精神の修練としての体操を強調した。その背景にはナポレオンと対立するプロイセンへの愛国的情熱があり,体操ということばもギリシア語起源のGymnastikからドイツ語起源のトゥルネンTurnenという新造語にあらためた。ヤーンは1811年ベルリンのハーゼンハイデに屋外体操場を設け,以後ドイツ体操の普及に努力した。その種目は,徒手体操のほか,あん馬,鉄棒,平行棒などの器械体操が中心である。現在はドイツのほかスイス,オーストリアで全国大会が開催されている。ドイツ体操連盟は250万人の会員をかかえ,5年に1度の大会には数万人の参加者がある。 執筆者:青山 敏彦
