【昭和歌謡の職人たち】 作詞家、高田ひろおさんの千葉の自宅を訪ねた際、高田さんは「これから遊びに行くから」と奥さまからお金を受け取ると僕を飲み屋街に誘った。奥さまの笑顔は母親のように大きな人にみえた。聞けば遊びに行くときは小遣いをもらうそうだ。奔放な人が多い業界で、高田さんのような人は初めてだった。 1970年代後半からのつき合いだが、あの「たいやきくん」を書いた人に会いたい一心で電話したのが最初だった。いつも新宿でのんだ。高田さんはガッチリした体でウイスキー1本飲んでもケロリ。こちらが挑発しても動じず、顔色一つ変えない包容力のある人だった。 「およげ!たいやきくん」の制作秘話を聞きたかったが、釧路出身以外は何も聞いたことがなかった。何十年もたって、この記事を書くために初めて本人に聞いた。今日まで他人に直接聞かれたことはなかったそうだ。