方言研究の見地から 「ものもらい」系について 東日本を中心に使用されている呼び名「ものもらい(ものむらい)」については、次のような言い伝えがあります。 「三軒の家から米をもらって食べるとなおる」(福島県東白河郡) 「よその家へ乞食に行くと、めこじき(ものもらい)が治る」(岐阜県土岐市) つまり、共通語形「ものもらい」や地域語形「めこじき・めぼいと等」の語源は、「これを治すために人からものをもらう」という無薬の治療行為と結びついて生まれたようです。これを受けて今回の調査における「ものもらい」の使用地域は東日本を中心として、そこから遠く離れた九州の佐賀県や鹿児島県、沖縄県でも多く確認されます。 約50年前に国立国語研究所によって行われた調査では、東海・関東・東北の一部にしか確認されなかった「ものもらい」が、特に若い世代を中心に上記の地域で勢力を拡大していると言えるでしょう。そしてこの「ものもら