この取材は王位戦で二冠を成し遂げた数日前に行われた。大一番の前でピリピリしているかと思いきや、豊島はいつもと変わらない。自然体のままである。 今年の将棋界の主役は間違いなく豊島と言えるだろう。王位・棋聖の二冠達成。3つ目のタイトルを狙う王将リーグでも間違いなく挑戦者候補の大本命だ。 そんな大躍進に周囲が盛り上がる中、渦中にいる豊島の目はあくまで冷静だ。念願のタイトル奪取に安堵した気持ちを漏らす一方、同じやり方のままでは通用しなくなると早くも危機感を募らせる。理想の将棋に近づけるため、日々トライ・アンド・エラーを繰り返すなど、将棋への飽くなき好奇心、向上心はまったく変わることがない。 選んだ甲冑は織田信長。たしかに温和な豊島と苛烈な信長では性格的にギャップがある。ただ従来のやり方に疑問を持ち、スピード感をもって変化を繰り返す点はまさに信長イズムだ。容赦ない下克上がある将棋界で、常に上を目指し