いしかわじゅんをご存知だろうか。大ヒット作品こそ無いものの、75年にデビューして以来、マニアに愛されながら、30年にわたり活躍を続けている息の長い漫画家だ。キャリア半ばから文筆業にも進出、最近はエッセイの仕事も多いようである。86年に出た最初のエッセイ集である『吉祥寺気分』(双葉社)には彼がデビューにいたる一部始終が書かれている。その経緯を今の視点から見ると興味深いので紹介させていただきたい。 明治大学に入学したいしかわじゅんは、軽音楽部と漫画研究会両方の部室を覗き、ちょっとしたきっかけで漫研を選ぶ。そこは、先輩に現在『沈黙の艦隊』などで知られるかわぐちかいじと70〜80年代に活躍したほんまりゅうがいて、しかも彼らは在学中にデビューを果たし、いしかわに衝撃を与える。いしかわは彼らのアシスタントを体験するなど在学中セミプロ気分も味わうが、プロを目指すことは無かった。 勿論、学生時代から、