ここ数年、社会人向けの大学院で、メディア・リテラシーを講じてきた。相も変わらず「新聞の読み方」を教えることが中心となっている大学の例なども耳にしてきたので、それではもはや何の役にも立たないと論じる。たとえば、アラブの春以降の中東を見てほしい。エジプトで揺り戻しのようなクーデターが成立した際、首謀した軍の幹部は、その呼びかけをツイッターで行なった。かつてなら軍の命令系統を使って順次伝わったはずのゴーサインが、今では一気に末端の兵士にまで達するのだ。当然、メディアもそれを知り、報じる。しかし、電波や活字になる頃には、すでに世の中の多くの人の知るところとなっている。 「メディア(媒体)の中抜き」という、言語矛盾的現象が、世界中で露になりつつあった。そこへ決定的な一撃を加えたのが、2016年のキーワードというべきpost-truthの横行だ。具体例は枚挙に遑がない。イギリスのEU離脱をめぐる国民投