ヒマラヤに近い中国の高地に、最後の母系社会と言われるモソ族が暮らしている。時代の変化の中で古い伝統を守ろうとする民族を、写真家が記録した。 中国の四川省と雲南省の境、標高約2700メートルに位置する湖、瀘沽湖(ルーグー湖)。この湖のほとりに「世界最後の母系社会」として知られる、モソ族の人々が暮らしている。 彼らは伝統的に、母系の血統を守り、「走婚」と呼ばれる通い婚のならわしを続けてきた。女性は自分の希望次第で伴侶を選ぶことも、替えることもできる。男性に頼るより、女性の主体性を重視する仕組みだ。 アサ・ヌジャさん(69)。何世代にもわたり、彼女のような女性たちがモソ族の家々を率い、財産や家名の継承に責任を負ってきた。子どもたちは母親と共に暮らし、母親は気持ち次第で伴侶を替えることができる。男性が現在の配偶者を訪ねてよいのは夜だけだ。この通い婚の伝統は「走婚」と呼ばれる。(PHOTOGRAPH