──正しい行いとは何か。この問いがなぜ現代に必要なのか。 「ハーバード白熱教室」(NHK)のマイケル・サンデル教授に同大で話を聞いた。── 「1人殺せば5人が助かる状況だったら、君ならその1人を殺すか」 「日々の君の行いは正しいのか、正しくないのか」 ハーバード大学教授のマイケル・サンデル(57)は問う。現代人が真剣に考えなくなった問いだ。 サンデルがこの「Justice(正義)」と名づけた講義を始めたのは、30年前の1980年。同大の学生が哲学と道徳の問題に興味を持ち、政治に積極的にかかわる市民に育つように、という思いからだった。 授業の様子はたとえばこんな感じだ。 サンデル「(バスケットボール選手の)マイケル・ジョーダンはある年に7800万ドルを稼いだ。国家の介入を最小限にしようとする自由意志主義(リバタリアニズム)の哲学者ロバート・ノージックは、政府が富裕層から貧困層に富を再配