2016年から17年にかけて、北朝鮮は核実験と弾道ミサイル発射をそれまでにない頻度で繰り返していた。何らかの手は打たなければならない。それは分かっていたが、首相の安倍晋三は防衛省の説明に納得できないでいた。 「費用対効果上どうなの? 高い金を払って守るっていうけど、一度にたくさん撃ち込まれたらどうするの?」 防衛省は地上発射型迎撃システム「イージスアショア」の導入を求めたが、安倍は1基約1千億円という数字に二の足を踏んでいた。安倍本人の口からだけではなく、防衛省出身の首相秘書官、島田和久を通じても「考え直したほうがいい」「イージス艦もあるんだから、それで十分じゃないか」というメッセージを伝えていた。